MSRレーベル(アメリカ)
ジェームズ・ブローンのベートーヴェン・オデッセイ再開!
ピアノ・ソナタ全集が完結目前!
MS 1471
「ベートーヴェン・オデッセイ第7集」
~ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全集Vol.7
ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 Op.109
ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 Op.110
ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 Op.111
ジェイムズ・ブローン(ピアノ)
録音:2022年7月18-20日 英国 サフォーク州 ウェストルトン、DDD、71’01
※2018年録音の第6集を最後にリリースの止まっていたジェイムズ・ブローンによるベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集の第7集。後期の3作を演奏している。
ジェイムズ・ブローンは1971年、英国の生まれだが、幼い頃にニュージーランドに移住したようで、7歳からニュージーランドで音楽教育を受けている。その翌年に一家はオーストラリアに移り、ブローンは12歳でモーツァルトのピアノ協奏曲第25番を弾いてオーストラリア・デビュー。1993年から2001年まで英国に、その後オーストラリアに、そして2010年に再び英国に拠点をおいて、演奏に教育に活躍している。
ブローンのベートーヴェンは、すっきりとした音色と卓越した技術で明快な音楽作りつつ、柔らかな旨味が広がるというタイプだろう。ベートーヴェンの後期のピアノ・ソナタであってもブローンは大きく構えることなく、ありのままの美しさを引き出してくれる。
MS 1472
「ベートーヴェン・オデッセイ第8集」
~ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全集Vol.8
ピアノ・ソナタ第13番 変ホ長調 Op.27-1
ピアノ・ソナタ第16番 ト長調 Op.31-1
ピアノ・ソナタ第18番 変ホ長調 Op.31-3
ピアノ・ソナタ第22番 ヘ長調 Op.54
ジェイムズ・ブローン(ピアノ)
録音:2022年8月26-28日 英国 サフォーク州 ウェストルトン、DDD、77’45
※英国のピアニスト、ジェイムズ・ブローンによるベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集の第8集。今回は初期から中期への移行期への作品4曲が収録されている。
ジェイムズ・ブローンは1971年、英国の生まれ。幼少期にニュージーランドさらにオーストラリアに移り、以降はオーストラリアと英国を行き来し、2010年以降は英国に拠点をおいて演奏に教育に活躍している。
この第8集でもブローンは、すっきりした響きと柔らかい風合いで気持ちの良いベートーヴェンを奏でている。ベートーヴェンにありがちな暑苦しさ重苦しさがなくとも、説得力のあるベートーヴェンはできるという見本のような演奏だろう。ブローンによるベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集は、残るは第28番と第29番 「ハンマークラヴィーア」の1枚のみ。完結が楽しみだ。
名指揮者ポール・パレーのピアノ作品集!
MS 1831
「ポール・パレー(1886-1979):ピアノ作品集」
海の上で(1910)/主題と変装(1913)/
魂について(1914)/即興曲(1910)/
印象(1912)/タランテル(1903)/
ワルツ 嬰ハ短調(1906)
フラヴィオ・ヴァラニ(ピアノ)
録音:2019年3月13日 カナダ トロント、DDD、78’02
※デトロイト交響楽団の音楽監督を11年務め黄金期をもたらしたフランスの大指揮者ポール・パレーは、元々作曲家志望で1911年にはローマ大賞を受賞したほど。しかしその作品はあまり顧みられずにいた。最近になってようやくパレーの作品が注目を浴びるようになる。このCDには1903年から1914年まで、パレ―の10代末から20代の作品が収録されており、時に印象派風、時にロマンティシズム豊か、と名曲ばかり。12曲からなる「魂について」や3曲の「印象」はどちらも1910年代の作品で成熟を感じさせる。この時代にしては穏健だったのかもしれないが、現代から振り返って聞く限り、間違いなく才能のある作曲家の作品である。
フラヴィオ・ヴァラニはフランスのピアノ音楽のスペシャリストで、ポール・パレーのピアノ曲に早くから注目していたパイオニアでもある。彼は2006年にパレ―のピアノ作品全集をCDにしているが、残念ながら日本にはほとんど流通しなかった。今回MSR Classicsでの再録音は待望のものだ。
オルガンとバヤン(!)で弾き分けるバッハ:クラヴィーア練習曲集第3巻
MS 1760(2CD)
「バッハ:クラヴィーア練習曲集第3巻」
前奏曲とフーガ 変ホ長調 BWV552~前奏曲/
「キリエ、永遠の父である神よ」 BWV669/
「キリストよ、あらゆる世の慰めよ」 BWV670/
「キリエ、聖霊である神よ」 BWV671/
「キリエ、永遠の父である神よ」 BWV672/
「キリストよ、すべての世の慰めよ」 BWV673/
「キリエ、聖霊である神よ」 BWV674/
「高みにいる神だけに栄光があるように」 BWV675/
「高みにいる神だけに栄光があるように」 BWV676/
「高みにいる神だけに栄光があるように」に基づくフゲッタ BWV677/
「これらが聖なる十戒」 BWV678/
「これらが聖なる十戒」によるフゲッタ BWV679/
「私たちは皆唯一の神を信じる」 BWV680/
「私たちは皆唯一の神を信じる」によるフゲッタ BWV681/
「天の国の私たちの父よ」 BWV682/「天の国の私たちの父よ」 BWV683/
「キリストが、私たちの主が、ヨルダン川に来た」 BWV684/
「キリストが、私たちの主が、ヨルダン川に来た」 BWV685/
「深い苦しみから私はあなたを呼ぶ」 BWV686/
「深い苦しみから私はあなたを呼ぶ」 BWV687/
「イエス・キリスト私たちの救い主」 BWV688/
「イエス・キリスト私たちの救い主」によるフーガ BWV689
デュエット第1番ホ短調 BWV802/
デュエット第2番ヘ長調 BWV803/
デュエット第3番ト長調 BWV804/
デュエット第4番イ短調 BWV805/
前奏曲とフーガ 変ホ長調 BWV552~フーガ
マルコ・ペトリチッチ(オルガン、バヤン)
(オルガン:BWV552,BWV669,BWV670,BWV671,BWV676,BWV678,BWV680,BWV682,BWV684,BWV686,BWV688)
(バヤン:BWV672,BWV673,BWV674,BWV675,BWV677,BWV679,BWV681,BWV683,BWV685,BWV687,BWV689,BWV802,BWV803,BWV804,BWV805)
録音:2022年5月26-287日ノースミンスター長老派教会、インディアナ州、DDD、113’39
※バッハのクラヴィーア練習曲集第3巻(前奏曲とフーガ 変ホ長調 BWV552、コラール前奏曲 BWV669-689、4つのデュエット BWV802-805)を収録しているが、ここではマルコ・ペトリチッチは小型のパイプオルガンとバヤン(ロシア式のボタン・アコーディオン)を使い分けるという面白い試みをしている。オルガンは、米国 インディアナ州 インディアナポリスのノースミンスター長老派教会のFISKオルガン(2020年製)を使用。マルコ・ペトリチッチはこの教会のオルガン奏者を務めている。
※その他MSRレーベル新譜
MS 1739(2CD)
ニコラス・ホワイト(b.1967):
無垢の歌(18曲)
大鴉(8曲)
ニコラス・ホワイト(指揮)
ザ・レイヴン・コンソート:
【クララ・ロットソーク(ソプラノ)
ロジャー・O.アイザックス(カウンターテノール)
マシュー・ロイヤル・スミス(テノール)
マーク・アンドルー・クリーヴランド(バス)
ヘザー・ブロン=バッケン(Vn)
ハイディ・ブロン=ヒル(Vn)
クリストファー・ナン(Va)
コリーン・マクゲリー=スミス(Vc)
ケイト・フォス(CB)
ローラ・ウォード(Pf)】
録音:2021年7月26-29日 米国 ニューハンプシャー州 コンコード、DDD、93’25
※英国生まれで米国で長く活動する作曲家、ニコラス・ホワイトの2つの歌曲集を収録。「無垢の歌」はウィリアム・ブレイク(1757-1827)の、「大鴉(おおがらす)」はエドガー・アラン・ポー(1809-1849)のそれぞれ有名な詩を基にしたもの。ホワイトは、古い音楽を模しつつ近代的な響きの音楽を用い、4人の歌手とピアノ六重奏で、それぞれの詩集をまるで室内オペラのように仕立てている。
ザ・レイヴン・コンソートは、ニコラス・ホワイトの作品を演奏するために2013年に結成された団体。
MS 1768(2CD)
「ロバート・ミュラー(b.1958):室内楽作品集」
①標章(2008)
②正面入口への先端(2002)
③寂れた小道(2014)
④永遠のはずれの領域(2002)
⑤夢の庭園(2013)
⑥弦楽四重奏曲 「別の側から」(1990)
⑦マントラ(1999)
⑧ラプソディと間奏曲(2012)
⑨エコー・ファンタジー(1989/rev.2018)
①②③⑤⑦⑧テレサ・デラプレイン(オーボエ)
①④⑥⑨アー=ジェン・カン(ヴァイオリン)
①⑥ティモシー・マクダフ(ヴィオラ)
①②⑥⑨ドミニク・ナ(チェロ)
②③⑦ロバート・ミュラー(ピアノ)
③⑧ロンダ・マインズ(フルート)
④エリック・トロイアノ(アルト・サクソフォン)
④⑨柏木知子(ピアノ)
⑤シュザンヌ・マゴーエン(イングリッシュホルン)
⑤⑧リア・ウリブ(ファゴット)
⑤リー・ムニョス(ファゴット)
⑥タラ・ミュラー(ヴァイオリン)
録音:2021年10月16-19日 米国 アーカンサス州 フェイエットビル、DDD、101’35
※米国の作曲家、ロバート・ミュラーの様々な室内楽曲集。ロバート・ミュラーは1958年生まれ、ミシガン州出身。ノーザンミシガン大学で学ぶ。作風は優しく明るいものが多い。そんな中で4楽章、22分弱の弦楽四重奏曲 「別の側から」からは、ミュラーのシリアスな作風が前面に出た力作。
演奏者はアーカンソー州で活動している人が中心。ヴァイオリンのアー=ジェン・カンは、フローレンス・プライスのヴァイオリン協奏曲2曲を録音したCD(Albany TROY 1706)で話題となった。
MS 1770
「オーボエ、クラリネット、ピアノのための三重奏」 ※発売中止
MS 1822
「金管三重奏のための新曲集」
ローレン・バーノフスキ(b.1967):ブラスのためのトリオ
エリック・モラレス(b.1966):ブラックバイユーの寸描
イヴェッテ・エリマン・ロドリゲス(b.1982):アダージョと舞曲
ジェフ・スコット(b,1967):障壁を超える
ドロシー・ゲイツ(b.1966):友人たちの間で
シャナイズ・ストリックランド(b.1991):B.o.P
ランタナ・トリオ:
【ラケル・サマジョア(Trp)
ステイシー・ミッケンス(Hr)
ナタリー・マニックス(Trb)】
録音:2021年5月13―15日 米国 テキサス州 デントン、DDD、52’37
※トランペット、ホルン、トロンボーンによる金管三重奏曲集。ローレン・バーノフスキ(1967-)、エリック・モラレス(1966-)、イヴェッテ・エリマン・ロドリゲス(1982-)ジェフ・スコット(1967-)、ドロシー・ゲイツ(1966-)、シャナイズ・ストリックランド(1991-)らの作品を集めている。エリック・モラレスとジェフ・スコットを除くと女性ばかりで、ランタナ・トリオの三人も女性奏者。シンプルな編成だが、いずれの曲も個性的だ。
ランタナ・トリオは、2018年にノース・テキサス大学の学生3人によって結成された金管三重奏団。既に5年間精力的に活動し、評判を高めている。
MS 1823
シューベルト:即興曲 変ロ長調 D935-3
シューベルト:ピアノ・ソナタ第20番イ長調D959
リスト:シューベルトのセレナード
パム・ゴールドバーグ(ピアノ)
録音:2017年1月 米国 ニューヨーク州 ニューヨーク、DDD、55’13
※ニューヨークを拠点に活躍するピアニスト、パム・ゴールドバーグのシューベルト。長大なイ長調のソナタは、多くのピアニストが冗長にならないよう多かれ少なかれ工夫を凝らして演奏するのに対して、ゴールドバーグはあくまで丁寧で誠実な演奏に徹している。それを聞いているといつの間にかシューベル独自の世界へ引き込まれてしまう。この作品はしばしば後半2楽章が軽いと指摘されがちだが、ゴールドバーグのようにあくまで作品によりそって演奏すればそれが誤り、つまりシューベルトが正しいと分かる。誠実さの勝利。リストによるセレナーデも、リストがシューベルトのセレナードをこよなく愛していたことが伝わって来る演奏だ。
MS 1824
「トロンボーンとウィンド・アンサンブルのための新作集」
フェリペ・サレス(b.1973):非同時性の、同時に
サルヴァトーレ・マッキア(b.1947):涙
ジェフリー・ホームズ(b.1955):トロンボーンと管楽アンサンブルのための協奏曲:航海の3楽章
デイヴィッド・マラマッド(b.1974):ダンサロット氏の懐かしの運動音楽ミックス~3曲
グレッグ・スピリドプーロス(トロンボーン,アルト・トロンボーン)
マシュー・ウェストゲイト(指揮)
UMassウィンド・アンサンブル・アンド・シンフォニー・バンド
録音:2021年10月,2022年3月 米国 マサチューセッツ州 アマースト,DDD、79’49
※トロンボーンと管楽アンサンブルの作品集。ブラジルのフェリペ・サレス(1973-)、米国のサルヴァトーレ・マッキア(1947-)、クラシックとジャズ両方で活躍するジェフリー・ホームズ(1955-)、ポップス風の作風で人気のデイヴィッド・マラマッド(I1974-)を収録。
グレッグ・スピリドプーロスは2001年から米国のオールバニ交響楽団の首席トロンボーン奏者を務めており、バンド、アンサンブル、トロンボーン独奏でも幅広く活躍している。
MS 1836
「弓と絵筆」~14の無伴奏ヴァイオリン曲
ストゥーキー:影破り/グラネロ:カデンツァ2/
エシマ:ザ・コレクション/マーセル:カラスの踊り/
コックス:光の中に/プライス:青い白鳥/
ラーセン:押し分けて進むただ一つはゆっくりと/
スティーヴンソン:ギヨーマン/メイズ:そして数マイル行かねば/
フラナガン:モントレー監視員/
ウェストン:水と空の真ん中の聖母マリア/キャンピオン:分裂/
ジョシェフ:同じく古い悲しみ/フラナガン:秋の活気に満ちた通り
ダン・フラナガン(ヴァイオリン)
録音:2022年7月15-17日 8月5,20日 米国 カリフォルニア州 バークレー、DDD,78’55
※コロナ禍は多くの音楽家に様々な影響を与えたが、これはそれを有意義な機会に捕らえた結果のCD。アメリカのヴァイオリニスト、ダン・フラナガンは絵画収集を趣味にしていた。ロックダウン時には自宅で一人ヴァイオリンを弾きながらコレクションの絵画を見て楽しんでいた。ふと彼は、絵画を基にした無伴奏ヴァイオリン曲を書くことを思いつき、自ら書き、また友人の作曲家たちに無伴奏ヴァイオリン曲を依頼した。14曲にはそれぞれ基になった絵画がある。もちろんこれが世界初録音。
MS 1837
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調 Op.78
フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
チィェン・イン(ヴァイオリン)
ポ=チゥァン・ チャン(ピアノ)
録音:2018年6月18,21日 米国 イリノイ州 アーバナ、DDD、54’28
※中国出身のヴァイオリニスト、チィェン・インと台湾生まれのピアニスト、ポ=チゥァン・ チャンによるブラームスとフランクのヴァイオリン・ソナタ。チィェン・インは上海音楽院、英国王立音楽院で学んだ後、独奏、室内楽で世界中で活躍している。ポ=チゥァン・ チャンは台湾で学んだ後、ボストン音楽院、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で学び、現在はウェスタン・イリノイ大学で伴奏者を務めている。インのヴァイオリンは たおやか という言葉がピッタリの、控えめで派手さはないものの柔らかくしっとりした美感に満ちている。それをチャンのピアノがしっかり包み込むような演奏で、ブラームス、フランクともじんわりとした味わいを楽しめる。