BRIDGEレーベル(アメリカ)
ロマン派を得意とするエマニュエル・グルーバーによる
ブラームス:チェロ・ソナタ!
BCD 9609
ブラームス:
①チェロ・ソナタ第1番ホ短調、Op. 38
②ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調Op. 78~第2楽章アダージョ(パウル・クレンゲル編曲)
③チェロ・ソナタ第2番へ長調、Op. 99
エマニュエル・グルーバー(チェロ)
アーノン・エレズ(ピアノ)
録音:エルサレム・ミュージックセンター,DDD、61’34
※エマニュエル・グルーバーはエルサレム音楽舞踏アカデミーで学ぶ。グレゴール・ピアティゴルスキー、ヤーノシュ・シュタルケルに師事。イスラエル室内管弦楽団・首席チェロ奏者。セコイア弦楽四重奏団、テルアヴィヴ・ピアノ四重奏団、イスラエル・チェロアンサンブルで活躍している。テルアヴィヴ室内楽協会の創立メンバーである。ピアノのアーノン・エレズとはベートーヴェンとメンデルスゾーンのチェロ・ソナタを全曲録音している(Eroicaレーベル、DELOSレーベル)。
仄暗い印象の第1番と明るく快活な印象の第2番の組み合わせは数多く存在するが、途中にクレンゲル編曲のヴァイオリン・ソナタ第1番の第2楽章アダージョが入ることで、少し違った印象が残る。それぞれの趣の違いの方に気を取られずに、自然な流れを感じながら耳を傾けることが出来よう。息の合ったデュオの演奏に集中するための工夫がアルバムの価値を高めている。
中国出身のヴィルトゥオーゾ孫嘉言による
ブゾーニのピアノ作品&編曲集!
BCD 9610
「BUSONI AND HIS MUSES」
フェルッチョ・ブゾーニ:ピアノ作品集、編曲集
①バッハ:半音階的幻想曲とフーガBWV.903(ブゾーニ編曲)
②ブゾーニ:トッカータ(1920)
③ブゾーニ:悲歌集~第7曲「子守唄」
④ブゾーニ:バッハによる幻想曲
⑤-⑧ブゾーニ:インティアンの日誌
⑨ブゾーニ:ソナチネ第6番「カルメン幻想曲」
⑩リスト:モーツァルト:フィガロの結婚からの2つの主題による幻想曲(ブゾーニ補筆完成版)
⑪ブゾーニ:モーツァルト:ドン・ジョヴァンニのセレナードによる練習曲
サン・ジアイエン(孙嘉言)(ピアノ)
録音:2024年1月 スウィーニー・コンサートホール,DDD、61’34
※サン・ジアイエン(孫嘉言)は中国、煙台市(イェンタイ)出身。ジュリアード音楽院で学ぶ。ヨヘヴェド・カプリンスキー、スティーヴン・ハフに師事。これまでに、ベートーヴェンのピアノ・ソナタの全曲演奏、エリザベス・チャン(ヴァイオリン)とヴァイオリン・ソナタの全曲演奏など、精力的に演奏活動を行なっている。クリーヴランド管弦楽団、ハレ管弦楽団、アイルランド国立交響楽団他と共演。シューベルトとショパンの作品演奏のリサイタルシリーズを続けている。
アルバム・タイトルの「BUSONI AND HIS MUSES」が貫かれた好企画のアルバム。バッハにおける「対位法」、モーツァルトにおける「透明性」、リストの「演奏技術」、民謡の引用、独自の実験主義、といった創作活動の源泉となったものを具体化したCDである。ダイナミックレンジの大きなものから端正なスタイルのものまで、表現の幅が広い選曲がされている。演奏も、それに応えた仕上がりで大変聴き応えがあり、単なる「作・編曲者」に留まらないものとなっている。
※その他BRIDGEレーベル新譜
BCD 9589
ポール・ランスキーの音楽Vol. 18
「タッチ・アンド・ゴー」~ポール・ランスキー(b.1944)打楽器作品集
①パターンズ(木と金属)(2011)
②メタル・ライト(2017)
③ホップ(1993)
④タッチ・アンド・ゴー(2012)
Ⅰ.タップ/Ⅱ.ストローク/Ⅲ.タグ
①-④グエンドリン・ディーズ(Perc)
①チョン・ジヘ、チョン・ジス、片岡綾乃(以上打楽器)
③イヴォンヌ・ラム(Vn)
④ケヴィン・セダトール(指揮)ミシガン州立大学ウィンドシンフォニー
録音:①③2022年9月、②④2023年9月,DDD、50’13
※ポール・ランスキーの作品集もなんと18集!ランスキーはプリンストン大学で学び、ミルトン・バビットらに師事。コンピューター音楽・電子音楽の分野で活躍する。アルゴリズムによるコンピューター音楽作曲のためのソフト開発をするなど技術的分野でも仕事をしている。
「パターンズ」は2台のマリンバと2台のヴィヴラフォン、数個の金属・木製のトイ打楽器のための作品。東京藝術大学出身で作曲家からも信頼を得ている片岡綾乃が参加している。「メタル・ライト」はヴィヴラフォンと4つの金属製打楽器のための作品。「ホップ」はヴァイオリンと打楽器のための作品。「タッチ・アンド・ゴー」は複数の打楽器とウインドオーケストラという比較的大きな編成の作品。
現代音楽だが、大変耳障りの好い響きの作品ばかり。打楽器のみの曲から次第に編成が大きくなり、徐々に盛り上がっていく構成になっていくので、楽しみながら聴き通すことが出来る。
BCD 9591
「チェーホフについて少し話しましょう」
~ドミニク・アージェント(b.1927):歌曲集
①3つの瞑想曲
Ⅰ.最後の祈願(ウォルト・ホイットマン詞)/
Ⅱ.銀(ウォルター・デ・ラ・メア詞)/Ⅲ.湖の底深く(アラン・ルイス詞)
②チェーホフについて少し話しましょう
③ペトラルカの3つのソネット
Ⅰ.ソネット第63番/Ⅱ.ソネット第164番/Ⅲ.ソネット第300番
④キャバレーソング集
Ⅰ.誰が知る事が出来ただろうか?/Ⅱ.君は愛の歌/
Ⅲ.最も幸運な女/Ⅳ.君が知っているのは何故/Ⅴ.君
①②④エイドリアーナ・ザバラ(MS)
②③ジェシー・ブルームバーグ(Br)
②③マーティン・カッツ(Pf)
④JJ・ペンナ(Pf)
録音:2024年 ウッズ・レコーディングスタジオにて収録,DDD、56’26
※ドミニク・アージェントは1927年ペンシルヴェニア出身。叙情的なオペラと合唱作品で知られている。ミネソタ大学音楽学部名誉教授。1975年にピューリッツァー賞を受賞している。
珍しい無伴奏の歌曲から始まるのでシリアスな雰囲気が支配する。しかし、次のオリガとチェーホフの会話のようなデュエットが始まると小さな室内オペラの空気感になる。ペトラルカは古典的な詞に近代的な音楽の取り合わせが面白いが、ブルームバーグの歌唱が見事である。キャバレーソング集は、これまでと打って変わって少し肩の力の抜けたような雰囲気になるのだが、ザバラの歌唱にはくずれた所がなく曲の良さがストレートに伝わってくる。曲順も選曲も好く考えられたアルバムである。
BCD 9596
「ウィリアム・ブランド:ピアノ・ソナタ集Vol. 3」
ウィリアム・ブランド(b.1947):
①ピアノ・ソナタ第6番ハ短調「動物寓意譚 – 愛を込めて」
Ⅰ.熊の踊り/Ⅱ.大鷹の歌/Ⅲ.パンサーは光に向かって/
Ⅳ.ドラゴン/Ⅴ.エドワード・ヒックスの「平和な王国」を思って
②ピアノ・ソナタ第15番 変ホ長調
Ⅰ.ワルツ/Ⅱ.レント/Ⅲ.ファンタジー
ケヴィン・ゴーマン(ピアノ)
録音:2024年9月17、18日 オクタヴェン・オーディオ,DDD、46’50
※ウィリアム・ブランドは1947年、プリンストン出身。ピーボディ音楽院で学ぶ。24曲のピアノ・ソナタ、100曲のギターソロ曲などを世に出している。また、画家・ライターとしても活躍している。
ソナタ第6番は各楽章にタイトルがあり、それぞれの由来があるので作曲家の意図がわかりやすく絵画的・描写的である。ソナタ第15番もやはり各楽章に由来や発想に特徴があり、現代曲というよりロマン派的である。ロシア風ワルツ、狂詩的なノクターン、ゴッドシャルクの「プエルトリコの思い出」をベースにした狂詩曲。
ピアノのケヴィン・ゴーマンはクレーン音楽学校、モントリオール大学で学ぶ。ザグネ王国音楽祭で第1位を受賞。現在、ディキンソン大学、ゲティスバーグ大学、サンダーマン音楽院、カンバーランドヴァレー音楽学校で教鞭を取っている。
BCD 9612
「天使への賛辞」
~ルイス・カーチン(b.1951)作品集Vol.4
①天使への賛辞(ヒルダ・ドゥリトル:詞)
Ⅰ.プロローグ/Ⅱ.ヘルメス・トリスメギトスは錬金術の擁護者/
Ⅲ.ヨハネは見て証言する/Ⅳ.嗚呼、神よ、私たちの時代ではない/
Ⅴ.決してローマではない/Ⅵ.いま磨く坩堝/
Ⅶ.ガブリエルのことをずっと考えている/Ⅷ.彼女は本を運んだ/
Ⅸ.ウーリエルに、聖堂なし、寺院なし
②ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための三重奏曲
Ⅰ.アレグロ・コン・スピリート/Ⅱ.レント/Ⅲ.ヴィヴァーチェ
③呪文と舞踏
④2つの聖歌(ジョージ・ハーバート:詞)
否認/嵐
①ジェニファー・ゼトラン(S)
ジェイムス・ベイカー(指揮)タレア・アンサンブル
②ホルショフスキ・トリオ:
【ジェシー・ミルズ(Vn)、オーレ・アカホシ(Vc)、相沢吏江子(Pf)】
③ジェイムズ・ベイカー(指揮)ダ・カーポ・チェンバープレイヤーズ
④マリサ・カーチン(S)、スティーヴン・ベック(Pf)
録音:2024年3月-6月 DDD、70’18
※ルイス・カーチンは1951年、フィラデルフィア出身。イーストマン音楽学校、ハーヴァード大学、タングルウッド音楽祭で学ぶ。サミュエル・アドラー、フレッド・ラーダール、アール・キム、レオン・キルヒナーに師事。タングルウッドで、ガンサー・シュラー、ブルーノ・マデルナに師事。オペラ、交響曲、室内楽、声楽アンサンブルなど100曲以上の作品を発表している。ニューヨーク州立大学音楽学部で教授を務めている。
レコーディングのメンバーは、ソリスト、指揮者、アンサンブル何れも現代音楽の世界で評価の高いエキスパート達である。それだけに手慣れたというか、質の高い演奏が聴くことができる。巨匠ホルショフスキ最後の弟子、相沢吏江子率いるホルショフスキ・トリオも参加。2人のソプラノも難易度の高い曲を危なげなく歌いこなしており、レヴェルの高さを示している。因みに「2つの聖歌」を担当している、マリッサ・カーチンは作曲家の娘であり、スティーヴン・ベックはダ・カーポ・チェンバープレイヤーズのメンバーである。